アラサー女の東海岸一人暮らし

ワシントンDCに住む女の考えごと

カレッジに通ってみた

アメリカには研究ビザで来ていて、日々研究機関的なところで働いているのですが、今まで留学をしたことないので折角なら学校にも行きたいと思って、いま英語を学ぶために平日夜に週2回にカレッジに通っている。大学を卒業したのが5年前なので、久しぶりの学生生活。


住んでいる所のすぐそばにはいわゆるアメリカの名門大学(University)がいくつもあって、短期のコースや社会人向けの土日や平日夜コースもあるのですが、めちゃくちゃに学費が高い。オープンに募集しているけども、その大学に通う海外からの学生が本コースが始まる前に通うというのが主目的みたい。
なので、自分の住んでいる郡(County)が運営しているコミュニティカレッジに通うことにした。

コミュニティカレッジは日本に相当するものがないので、説明が難しいのだが、「毎日留学ナビ」によるとこういうところ。
http://ryugaku.myedu.jp/program/community.html
"地域住民のための教育機会提供の場として設立された高等教育機関。最近では、海外からの留学生にも門戸を拡大する大学が増え、地域住民に留まらず、留学生受け入れのための環境整備やプロモーションに積極的なカレッジが目立ってきています。一般的には修学期間が2年で学位及び学術称号が授与されます。"

 

大学と専門学校の間という感じなのかな。でもビジネス系科目、芸術系、人文系、体育、コンピュータサイエンスなどありとあらゆる種類の授業が揃ってて、キャンパスの設備も本格的。
なんといっても、カレッジの魅力は授業料の安さ。折角地域の税金も納めているのだから利用しない手はないと思い、図書館に置いてあったチラシで情報収集。英語のクラスは、リーディングライティングに特化したものや、発音矯正のクラスなど色々ある。開講時間も平日夜のコースや平日昼のコース、土日だけのコースなど様々。受講するためにはクラス分けのテストを受ける必要があり、その結果通知兼スピーキング力をチェックされる面談があるとのこと。

テストは平日昼間しかやっておらず、会社を休んで受けに行く。2時間かけて英検2~3級くらいの問題を解く。中身は文法とリーディング。隣に座った若い男の子がめっちゃ私の回答をのぞき込んでカンニングしてくるので笑ってしまった。異性からこんなに熱心に見つめられるのが久しぶりなもので。。。

面接は翌日(これまた平日の昼間)。真面目な英語の勉強なんてしばらくしていないが、日本の受験英語教育のおかげかほぼ満点であったため、アドバイザーの面接官から「あなたのレベルは外国人としては最高クラス。これなら別に英語のクラスじゃなくて学びたい科目があればそっちでもいいんじゃない」と言われる。単純にうれしい。でも英語でない科目の多くは平日日中で時間的に厳しそうなのであきらめる。「あなたのレベルで平日夜やっている英語のクラスはこの2つね」と言われる。リーディングとライティングに特化したクラス、もしくはディスカッションに特化したクラスだそうだ。日々アメリカで研究機関で働いていて、リーディングに難を感じることはないのだが、ライティングとスピーキングには強い苦手意識がある(多くの日本人は同じだろう。)ライティングも見てもらいたいけどスピーキングも改善したい、と自分の苦手意識を伝えたところ、とにかくたくさんしゃべる機会を作ったほうがいいから、とディスカッションのクラスを進められた。ライティングについては、必ずしも授業でやらなくても、書いたものを教師に提出すれば見てくれるだろうし、とのこと。なるほど。


納得して受講手続きを済ませた。一点、意外だったのは、カウンティ住民は住民価格で受講できるとのことなのに、私の持っているビザの種類では、その住民価格割引が受けられないとのこと。225ドルの追加を余儀なくされる。財布に痛い。
それでも週2回に2時間半を16週、つまり40時間の授業が、コース費用425ドル+住民外価格225ドルで受けられる。1時間あたり16.25ドルと思えば安いもんです。


ディスカッションのクラスは約15人。人種は、メキシコ、イタリア、フランス、ロシア、ブラジル、スペイン、インド、韓国、台湾など多岐にわたっている。女性のほうがやや多いかな。年齢も様々。最年少はおそらく私(28歳)。最年長はフランスからきている黒人のおばちゃん。45歳でコンサルをしているが、娘も同じカレッジに通っているそうだ。親子で同じ大学に通うなんて、なんてすばらしいのだろうか!!!一番仲良くしているのはブラジルで歯医者として働いていたけど、夫が2年間アメリカに転勤になったから子供を連れてついてきたという女性。育児だけじゃつまらないので、アメリカでも歯医者の資格を取れないか勉強中だそうだ。他にもスペイン空軍でパイロットをしていたというおじさんもいれば、医療系の研究機関で働いているイタリア出身の男女はカップルで授業に参加している。

 

ディスカッションの授業だけあって、授業中どんどん意見を求められる。みんなめっちゃ喋りたがりだ。次のテーマにうつっても、「さっきの議論についてだけど、やっぱり自分は~」と何度も議論が戻ってくる。
自分含めて日本人はやっぱりシャイというか、自分の考えがまとまるまでは発言しない癖があるように思うが、一瞬でも躊躇していると発言できないまま進んでいく。せっかく金を払ってるんだから喋らせろ!と思い必死に喋る。意見を考えながらなんとか割り込まれないように言葉を続けないといけないので頭は常時フル回転で、2時間半の授業後はめちゃくちゃに疲れる。車で30分の距離なので、帰りの運転は夜も遅いし、自分も疲れ切っているしでちょっと怖い。(ので帰宅すると化粧を落とす気力もなく床で寝てしまう…)

 

これまでの授業で一番自分が活躍できたと思うのは、same-sex school(女子校や男子校)が生徒の性格にどのような影響を与えるかというトピックについて皆で議論したときだ。私は小学校から高校まで12年間女子校だったので、その経験と自分が思う良い点悪い点を語ったらみんな興味津々で質問してきて、とても面白かった(そしてすごく疲れた)。みなそれぞれ自国の習慣などを話してくれるので、英語の勉強というより色々な文化を知ることができて、とても面白い。新しいことを学ぶのはとてもエキサイティングなことだと改めて思わされる。

 

あと各国の訛りが出るのもとっても興味深い。フランス出身の人は、英語の発音をするときにしばしばHが抜ける。OSを説明するときにオペレーショナルと言おうとしているが、私には「オプラ~(↑)シオナル」と聞こえる。ロシア出身の人はAとOの発音が混ざっている。私の英語は抑揚がなくて、Rの発音がへたくそらしい。

 

日中働いている研究機関は、こう言っちゃなんだがかなりハイソサエティなところで、雑談の話題レベルも英語のレベルも高いので、とても勉強にはなっている。でも、夜に通っているこの学校のほうが、人間が必死に勉強して生きていく力をつけていこうとする活力を感じられるので、私にとってはとても大事な場所になりつつある。
ブラジル人のクラスメイトのノートは子供のよだれで毎回カピカピになっているし、教科書には子供にされた落書きが踊っている。でも毎週宿題をきちんとやってきているし、授業終了後は子供の寝かしつけのために急いで帰っていく。夜間だけとはいえ、子供を育てながら学校に通うのはとても大変だろう。それを思うと家族のいない私が、勉強する時間がないというのはただの甘えだと思わされる。彼女は子供がいるからか、各国の子供関係の施策について詳しく、いつも鋭い意見を述べている。私が普段リーチしない領域なので、とっても勉強になる。

 

私の大学時代、周囲には同年代の学生しかいなかったので、社会に出てからまた学びなおすというイメージがあまり湧かなかった。でも一度社会にでた今のほうが学ぶことの有難さや尊さを強く感じる気がする。アメリカでできた友人たちにも、社会に出て何年、何十年と経ってからみ大学院などで学びなおしている人がたくさんいる。自分が将来なにかをまた学びたくなったときに学べる環境があるということは、素晴らしい希望だと思った。カレッジのキャンパスには、平日の夜でもたくさんの車が泊まっている。たくさんの人間がこんな夜まで勉学に励んでいるのだと思うと、背筋が伸びる気持ちだ。

 

学ぶことは若い人だけの特権じゃない。何歳になっても学び続けられる社会、それを受け入れる社会であってほしいです。